2022年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介|JIDA中部ブロック公式サイト                     

2022年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介

公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会
中部ブロック・次世代事業担当
委員長 岡田 心

◆2022年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介◆

中部ブロック・次世代事業委員会では、2020年度もデザイン系大学卒業制作訪問(卒展訪問)を開催し、訪問先毎に優秀な作品を選定し表彰しました。
今後の開催予定はこちらを御覧ください。

2022年度のJIDA中部ブロックデザイン賞は以下の方々です。

2022年度JIDA中部ブロックデザイン賞

■名古屋工業大学

 2023年3月5日(日)会場:名古屋工業大学・4号館




最優秀賞:杉山弥優 「飼い主の服を活用する愛犬のためのプロダクト」


評価コメント:
飼い主の服についた匂いに着目し、飼い主が留守でも、寂しい気持ちを軽減させたり、遊ぶときにも活躍するようなプロダクトである。 捨てられないけど、使わない服を愛犬にとって喜ばれるような物に昇華出来ないか?という問題提起に対する一つの回答としての「wan-idea」の提案力は、素晴らしい。愛犬を通じてプロトタイプの製作を重ねており、完成度の高い作品として仕上がっていました。愛犬家の審査員からは、靴下ボール、家族の中の誰の靴下ボールが愛犬が好むか?直ぐにでも 欲しいと大絶賛。ブラッシュアップを重ね、愛犬とともにSDGsを考えるグッズとして商品化に期待したいところである。(文責:井関 徹)


最優秀賞:小松原治弥 「おたのしみそろばん」


評価コメント:
地元兵庫の伝統工芸品の「播州そろばん」古来の計算方法に基づく機能性とそろばんの学習としての可能性をもち、今後の日本において必要性を感じます。「そろばんを習いたい」と、子供たちが思ってもらえるようにはどうしたら良いか?そろばんと音楽とのリンク性を感じ、玉の重なりと和音記号の連なりの発想展開から試作を重ねた作品の音色が良く琴を連想する。そろばんの基礎となる数字を入力する行為を視覚と触覚に加えて聴覚も刺激する事で楽しく学ぶことが出来る。まさに、孫が出来たら与えたい知的玩具だと感じました。デザイナーとして今後も文化継承につながるプロダクトを製作していって欲しいものです。(文責:井関 徹)

 

■名古屋市立大学

 2023年2月26日(日)会場:名古屋市立大学・北千種キャンパス



最優秀賞:松野晴彦
「SFで描かれた未来」と「現実の未来」の相違点についての調査、分析


評価コメント:
論文にもクリエイティブ性が必要であることに改めて気付かされる研究内容であった。昔のSF映画に描写されている未来(すなわち現在)と、2022年に実現している技術の差異の大きさによって、これからの未来を予想しようという試みの論文である。未来は人間の欲望で作られる面も大きく過去の延長だけでは予測できない。それでも方法を編み出し調査を行った上で、まとめる段階で独自に色々と手法を考え挑戦した姿勢を評価した。未来の製品・サービスの提案段階ではさらにクリエイティブ性が必要になり、今回の未来提案はまだおとなしい印象である。さらに研究と提案が発展することを期待したい。 (文責・堀田俊則)


優秀賞:黒田和花
ユーザーが介入できる余白を残した製品とユーザー満足度の関係調査


評価コメント:
ネイルをする時に合わせて塗ることができるアクセサリーの提案である。不便益を大きなテーマとして、ユーザーが製品の使用過程において介入できる余地を「余白」と命名し、具体的な製品に落とし込んでユーザーの心理評価を論文にまとめている。ネイルの塗料で塗ることができる白い陶磁器とガラスのイヤリングは、実験のためであっても綺麗に作られており、プレゼンテーションもガラスブロックの壁面をうまく利用して展示していた。 (文責・堀田俊則)


特別賞:マーティン慈英玖
車が「愛車」と呼ばれるための、IKEAエフェクトを活用した自動車のデザイン


評価コメント:
車にあまり興味がない人であっても、新車を買ったばかりのころは洗車を高頻度で行っていたでしょう(筆者経験談)。自動車への愛着が行動になるわ分かりやすい行為が洗車ということに着目して、洗車したくなるようなエクステリアデザインを提案している。機能が一定レベルに達した製品やサービスにおいては、いかに利用者・所有者に愛着を持ってもらえること、好きになってもらえることがますます重要になってくる。それらを考えるためのきっかけの一つを提案していることが評価された。最終的な造形においては、個人の好きな複数の車をつぎはぎしただけのスタイリングに留まっているので、オリジナルな提案をもっと突き詰めて表現できるとさらに良くなる。(文責・堀田俊則)

 

■大同大学

 2023年2月26日(日)会場:ナディアパーク・2Fイベントスペース



最優秀賞:遠山千聖 「HOLLOW CHAIR」


評価コメント:
美しい。工業デザインの現場では、様々な制約や条件を逆手に取る発想が求められることが多い。学生による創作の現場でも一般的になった3Dプリンターだが、出力サイズや強度的にはまだまだ制約が多く、スケールモデルやプロトタイプに留まることが多い。彼女の作品では、大きなカタチを出力サイズの制約で止むを得ず分断した後で、繋ぎ目は見えないことにしてワンピースに見せることをやめた。分けざるを得ない各パーツの造形を自由に捉え、ひとつの世界観を壊さずに個々のバランスを取るにはセンスと覚悟が必要だったに違いない。白木の素材感との使い分けや構成、エレガントな曲面には「カタチに対する憧れ」を感じ、全体をまとめた力量が素晴らしい。(文責・金澤秀晃)


優秀賞:山本竜之介 「オリジナル干支フィギュア」


評価コメント:
JIDAとして、これを工業デザインと呼ぶかどうかには議論があるかも知れない。また、素材や技法に新しさがある訳でもない。それでも彼の作品が私達を唸らせたのは、その世界観と確かなスキル、そして何より作品にかける熱量だ。作家性の強いアウトプットだが、造形師に求められるキャラクターや世界観の設定力、デフォルメや瞬間を切り取るポージングのセンス、それを表現する高いデッサン力、再現・複製するための素材や技法に関する確かな知識とスキル…どれをとっても、高いレベルで観るものを圧倒してくれた。完成度の高い12体ものフィギュアーを見た時に感じた圧倒的な「ものづくりが好き」という気持ちに無条件に拍手を贈りたい。(文責・金澤秀晃)


特別賞:中條大地 「E Camping Side Car」


評価コメント:
EVとしてのモーターサイクルが抱える「大容量バッテリー問題」をサイドカーの存在でカバーするアイデアはコロンブスの卵だった。サイドカーの前端が単車の前に回り込む独特の構成で、そこが唯一とも言える特徴ではあったが、CGのクオリティーは高く、丹精によくまとまった佇まいを提案してくれた。前に伸びたサイドカーのフラットな部分にキャンピング場で活用出来る機能を盛り込んでも良かった。モビリティーの場合、実寸大のモデルを作ることが困難で、この作品もCGと動画による提案となった。他に比べ訴求力が下がる印象も否めないが、今の時代に即した表現手法として受け止め、我々もまた「質感やスケールが分かり難い」「空間が把握し辛い」と言わずに新しい表現に慣れていく必要があると感じさせてくれた。(文責・金澤秀晃)

 

■名古屋デザイナー学院

 2023年2月20日(月)会場:名古屋デザイナー学院



最優秀賞:中村日暖 「atti kotti」


評価コメント:
子供にとって、遊びに出掛ける と 連れていかれる は、同じ外出であっても全く行為が異なる。親にとっても同じことが言える。連れて行かなければならないシーンでは、子供の自由意思を抑制しながら手を引いて歩かなければならない。このプロダクトにより、子供が親を先導するかのよう逆転の発想は「連れ歩く・連れ歩かされる」ことから解放され、またゲーム感覚もあり、連れ歩く行為からの解放による子育ての負荷を和らげてくれるものであり、未来の子育てアイデアとして高く評価できる。ルーペをモチーフにしたシルエットも直球で好感が持てた。動物園やアミューズメントパークなどへの展開も期待できる面白い作品で、作者の持つ「楽しさに転換させる力」に期待している。 (文責・水野健一)


優秀賞:小島 遥 「しんまい」


評価コメント:
女性が社会人の嗜みとしての、はじめての化粧にフォーカスを置いて、新米にかけて米のシルエットをモチーフにしたトンチの効いたバリエーションは、メッセージ性もありコレクションアイテムとしても商品化へのリアリティを感じた。パッケージについても米袋を使うなど、遊び心が揺さぶられ、ブランディングにも成功していると思えた。起き上がりこぶしのギミックを取り入れて倒れない工夫もされており完成度は高い。懸念として、ファンシー過ぎる部分と一歩違うと玩具に見えてしまう佇まいに、化粧品としてリピーターが望めるのか、アジアにおける女性の化粧の強要といった切り口からの解決策に繋がっていないことに審査で意見が大きく分かれた。 日本を連想させるスーベニア商品として空港などのインバウンドを狙うなど、将来に期待できる作品であることは間違いない。作者自身が化粧が好きであり、化粧への入り口に優しく誘引したい気持ちが作品に力を宿らせていた。(文責・水野健一)


特別賞:近藤樺南 「つながるカープブレス」


評価コメント:
広島カープファンのための、広島カープファンによる、広島カープ愛から生まれた作品。これに尽きる。好きだからこそ出来ること、膨大な選手の分析も去ることながら、実際に広島カープの取材を実現させたことは好きだからこそ出来た行動と思える。ファン同士の交流・繋がりをブレスレットで紡いでいくオフィシャルグッズの提案は、ファンでない者が口を挟む領域では無いが、リアルなグッズ販売目線で得た濃密な取材が仇となり、最終アウトプットされた作品は、好きで始めたはずの尖った部分が薄まってしまったことは勿体無いと感じた。しかし、好きであることと、商品化のリアルを実体験したことは作者の大きな財産になるはずだ。(文責・水野健一)

 

■静岡文化芸術大学

 2023年2月18日(土)会場:静岡文化芸術大学



優秀賞:増岡秀一 「さんぐうシャトル 2033年の伊勢神宮参拝で活躍するモビリディ」


評価コメント:
2033年に伊勢神宮で行われる「弐年遷宮」の参拝客のための自動運転モビリティの提案。ユーザーは参拝客、路線は外宮〜内宮〜帰路に特定するなど企画意図は明確であり、使われる環境にマッチする外観、移動を楽しむための内装などオリジナリティあるデザインが創出できている。参拝客の年齢層・人数・荷物などを具体的に想定しレイアウトの合理性を高められれば、さらにモビリティとしての完成度をあげることができると思う。 (文責・谷川憲司)


特別賞:藤井優衣 「Taketto 竹と一緒にウォーキング」


評価コメント:
浜松市の佐鳴湖周辺でノルディックウオーキングを楽しむ高齢者のためのプロダクト。素材に竹林保全のため伐採竹材を使用する、使用後は竹炭にして佐鳴湖の浄化に用いる、レンタルで貸与する仕組み、RFIDを用いた盗難防止装置、ウォーキングを記録するアプリ、さまざまな太さの竹に対応するグリップ構造、きちっと造られている展示など、多くの要素が細かく考えられている点が評価された。一方で、プロダクト自体の魅力、ユーザーにとっての楽しさなどコアの部分をもっと描けられたら、さらによかったと思う。(文責・谷川憲司)

 

■名古屋芸術大学

 2023年2月18日(土)会場:名古屋芸術大学・西キャンパス



優秀賞:都筑大由樹 「ORIGIN」


評価コメント:
座るということへの情報の取り方やその表現方法に力を感じた作品。 1/1のペーパーモックによる検証などのプロセスと、最終作品の美しさにも 引き込まれた。ただ、椅子の提案には実際に座ってみたかった。今後の活躍に期 待したい。(文責・岡田 心)


優秀賞:増田理喜 「7つのYoriMichi」

評価コメント:
AIなどによる自律的な制御系を搭載したコンシェルジュ型モビリティの提案で、利用者にとって最適な「寄り道」を提案し、導いてくれるフレンドリーな相棒である。自動運転が普及した市街地は、自動車中心から歩行者中心の環境へシフトすると想定し、その環境下でのモビリティの新しい可能性を模索している。本人病欠のため、直接内容が聞けなかったのが残念である。


特別賞:山田実侑 「eier」


評価コメント:
デビュー用の化粧品だから「良いものを」という着眼点を 上手くプロダクトに表現された作品。 背伸びしたい繊細な年ごろのターゲットにむけての表現方法としては、 たまごが良かったのか?という議論にはなったが、手で考え、最後まで モノと対話した姿勢が現れている学生らしさが評価された美しい作品であった。(文責・岡田 心)

 

■名古屋造形大学

 2023年2月14日(火)会場:名古屋造形大学・名城キャンパス



最優秀賞:鬼頭 晴 「Shirodoki 五感で感じる丁寧な暮らし」


評価コメント:
五感それぞれをテーマとした道具のデザインとそのギミックは完成度も高くどれも面白い。また、素材や色が整っておりシリーズとしてのまとまりもあり、プレゼン動画や展示方法なども含めて彼がイメージする「丁寧な暮らし」がよく表現されている。この先、自身の体験を重ねることでその「丁寧」がどのように深掘りされ、道具がどう進化していくのかが楽しみな作品である。今後の活躍を期待したい。 (文責・後藤規文)


優秀賞:小林加奈 「Reglaze 地場産業の廃棄物からつくる釉薬」


評価コメント:
出身地「豊橋」の地場産業から出る廃棄物「鶉の殻」と「輪菊の灰」を使った2つの釉薬の研究で、それぞれの地域産業にプロダクトとして繋げていく素晴らしい提案である。リサーチから研究、デザイン提案のプロセスが分かりやすく魅力的に展示されており、仕事量の多さも含めて、計画性の高さを感じる。現状のイメージを壊さないリアリティのあるデザインも利用者としての視点がしっかりしており、彼女の豊橋愛が感じられる提案である。(文責・後藤規文)


特別賞:三村 颯 「持続可能な陶磁器生産の研究」


評価コメント:
卒業後、窯業の会社で活動を始める彼の研究は全てを自分で試してみることが主眼。業界では陶器のリサイクル技術はかなり進んでおり、研究テーマとしの新鮮味は欠けるが、一通り自分の手で試してみることで新たな発想を模索するその姿勢は好感が持てる。仕事量が多く、この研究に対する熱量が評価された。(文責・後藤規文)

 

■名古屋学芸大学

 2023年1月21日(土)会場:愛知県美術館ギャラリー8F



最優秀賞:矢澤千波 質感「焼き物のテクスチャーを実験して、花器と照明を制作」


評価コメント:
社会的な「課題解決デザイン」とは異なるアプローチの工芸的デザインであるが、焼き物のテクスチャーに思いを込め、様々な材質を粘土に混ぜ試作実験を繰り返し評価した成果を現代生活の中に収まる花器と照明のデザインに結び付けている点を高く評価した。デジタルな世界観の中でアナログワークのプロセスの価値を再認識させられた温もりあるデザインはシンプルな造形の中にテクスチャーの変化を際立たせた部分を絶妙に配置、そこからの光の変化が美しく、今までに無い花器と照明の表情をみせてくれる魅力的なデザインで、今後の展開も非常に楽しみである。(文責・江藤太郎)


優秀賞:足立夏帆 Morphosire「コスプレの小道具をリモコンにして、マッピング技術で変身する装置」


評価コメント:
人の心の中に潜む変身願望の欲求に焦点を当てたデザインを評価した。皆、幼い頃「変身」と叫んで何でもできる超人になりたいと思う。心理分析的には、変身願望は心の苦しみを乗り越える心の動きでもある。弱い自己を理想的自己に変身することで客観視できる。 Morphosire は現代人に潜む「弱い自己」の悩みを和らげる装置と考えると現代社会に必要なデザインといえる。ゲーム感覚で誰もが気楽に「変身」を疑似体験できる楽しさを提供できることは素晴らしいことであり、コスプレの世界的な広がりはファッションとも結びつき文化的な位置付けを確保しつつあることも評価の視点とした。(文責・江藤太郎)


特別賞:佐橋 龍 KIZAme「人が生きている時間・振動を形に残す腕時計」


評価コメント:
人が生きていることで生じる個の「振動」を刻み無地の文字盤に記録する時計という極めて「意味的なデザイン」の考え方に共感を覚える。人生の時を形として記録する装置は心の動きが体に伝わる繊細な動きもアナログ的にメモリーでき確認できる。このような捉え方は物事の意味を深く多視点で捉えなければ行きつかない考え方で哲学的なアー ト思考ともいえる。デザインの役割の広がりを考えさせられる視点であることは間違いないであろう。佐橋氏の今後、物事を深堀する考え方に期待したい。(文責・江藤太郎)

 





主催:(公社)日本インダストリアルデザイン協会・中部ブロック
協力:セントラル画材株式会社

 

 

 

更新日:2023.03.17 (金) 19:30 - (JST)]
アーカイブ利用規約サイトマップお問い合せログイン